天神塚は古墳時代中期の円墳。直径16m・高さ2m・未発掘。道を隔ててすずめ塚があり、また北側には周濠と住居、勾玉工房跡がある。墳上に天神社がある。石室は無疵である。
すずめ塚は表土が取り除かれ埋葬品も持ち去られたが、石室の大きな石が残されている。石室内が赤く装飾されていたことから、もともとは「朱詰め塚」と呼ばれていたのではないかと言われている。石室の上に供養塔がある。石室は底辺2．7m、長さ約8mである。
（関連する文化財）
天神塚遺跡
約5基以上の古墳があったとされる貞広古墳群の中でも中心的な天神塚古墳と、その西側の雀塚古墳は早くから知られ種々の書物にも紹介されてきた。南側に開口する横穴式石室の円墳で、底径約16m、高さ約2m（三加茂町史）と記されているが、墳頂部3分の1程度は削平されて中央西側に天神社を祀る。古墳にまつわる多くの伝説も残っているが、地元の人々による維持管理が長年自発的に行われてきた。
町の天神塚周辺公園整備事業により、公園として整備するための事前の確認調査が平成7年、町教育委員会により実施された。調査の目的は、本古墳の規模、周濠の有無、周辺の遺跡の存否等とされ墳丘本体は対象外とした。墳丘を中心に、南北、北東、南東方向に4本の幅2mのトレンチ（試掘溝）を設定、古墳の北側には過去に水深2m程度の溜池があったといい伝えられているとおり、北、北東のトレンチを2mまで掘り下げても遺構が見つからないので、池の存在が確かめられた。南東のトレンチでは、地表下50cmから幅6m、深さ1.2mの周濠跡が出土した。現墳丘のすそには三段に人頭大の河原石が並べられ、当時のすそは1.5m南へ張り出していたことが分かった。
古墳の20m南東に、地下40cmの地点で一辺6mの方形竪穴住居跡が出土した。床面は全面に焼土が覆い、中央付近には太い炭化材がつみ重なっていて火災か、あるいは遺物の少なさから火をつけて他へ移動したものと考えられた。南トレンチにも、周濠と土止めの列石が認められた。遺物は、須恵器の高杯、土師器、滑石製紡錘車、蕨手刀子などで墳丘は直径25mあったらしい。6世紀末頃の後期古墳で、1軒の竪穴住居は6世紀初めとしている。
（三加茂町史（続）より）
稲持遺跡
加茂と足代を結ぶ県道三加茂・三好線（三三大橋）の建設に伴い、南岸側の、稲持地区の遺跡調査が昭和61年から3年間実施された。稲持は、すぐ東の貞広古墳群とも隣接しており早くから遺跡の存在が指摘されていた。
県教育委員会文化課による1年目の調査では、弥生時代後期の直径9.1mの竪穴住居跡など5棟の住居跡、浅い溝に囲まれた北側斜面には多数の土器の細片が叩き割られた状態で散乱し「土器だまり」のように集められており、完形品は1個もなかった。遺物は、讃岐系のカメ、石鏃、鉄製品、ガラス小玉、石製模造刀の柄、勾玉2個などが出土し、弥生時代末から古墳初頭の時期のものらしい。
昭和62年に行われた2年目の調査では、本遺跡の最大の特徴とされる勾玉（古事記では曲玉）製作に関わる遺構や遺物が確認された。現在の地表下80センチの面から竪穴住居跡7軒、溝7本、土坑（穴）29個、甕棺墓一、箱式石棺墓二など弥生時代後期後半から古墳時代初頭の遺構が出土した。特に住居址のうちで、長円形をした2軒は勾玉製作工房の跡と考えられ、床面から叩き石、台石、砥石、紡錘車、勾玉破片、蛇紋岩の剥片など多数の道具類が出ている。土坑の中に堆積した赤褐色の粘土は、勾玉の仕上げに使った研磨剤であろう。製作方法は、原石を叩き割って研磨を何回もくり返す独特の技法で「稲持技法」とも呼べるものである。灰緑色の蛇紋岩の原石は、稲持谷や泉野から運ばれており、またここで造られた勾玉は未製品のまま脇町、板野。阿南、讃岐までも運ばれ、稲持遺跡でも香川、鮎喰の土器が出ているので広い地域間の交流が考えられている。
3年目の調査では、地下60cmから2mの間に平安時代から縄文時代晩期の遺構が出土した。石斧の製作工房、集石遺構、建物跡、土器だまり、積文時代晩期の鉢、磨製と打製の石斧、弥生中期の土器、叩石、磨石、台石、砥石、石包丁、石鏃など石製品が多いが、なかでも縄文晩期に蛇紋岩の円礫を拾って石斧を作っていたことが県下で初めて明らかにされている。
このように、縄文～弥生時代の三加茂地区は人口も多く、近辺で最も進んだ地域の一つだったのであろう。
（三加茂町史（続）より）
