この図は密教図像によって描かれたもので、二重框のある蓮華座の上に、右手に五鈷杵、左手に五鈷鈴をもち二重円光を背にした像である。金剛薩垂は金剛杵をもつことにより堅固不壊の菩提心を象徴するもので、普賢菩薩と同体ともいわれ、また大日如来の化母的存在ともいわれている仏である。
頭に大きい宝冠をいただき大柄な瓔珞、剣を身につけた白色の肉身は鮮やかで、その他の色彩は暗色の朱、群青、緑青を主調としている。
鎌倉中期のものと考えられるが、保存状態は極めて悪く画面全体に横列の並行な剥落があり、ことに頭部や顔面などの主要な部分に損傷があるのは惜しまれる。昭和四十三年度の補助事業として修理。作品そのものは優れており、金剛薩垂像の本格的な一幅として貴重な存在である。
(ニ)の絹本著色文殊菩薩像と同類のものであって、作者は同じでなかろうか。昭和42年(1967)6月15日指定、重要文化財(絵画)=徳島の文化財(1969)より抄出)
(三加茂町史より)
※原物は京都国立博物館